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東京高等裁判所 昭和62年(行ケ)235号 判決

一 請求の原因一(特許庁における手続の経緯)、二(本件発明の要旨)及び三(審決の理由の要点)の事実は、当事者間に争いがない。

二 そこで、原告主張の審決の取消事由の存否について判断する。

1(一) 成立に争いのない甲第二号証(本件公告公報)によれば、本件発明の技術的課題(目的)、構成及び効果は次のとおりであると認められる。

本件発明は、パイプ型フイルター、シガレツトパイプ等の喫煙具を個別に密封して病原菌、雑菌、湿気、臭気、塵埃等の侵入を防止し、かつ使用時には個別に取り出しができる喫煙具封入面体に関するものである(本件公告公報第一頁第一欄第二四行ないし第二八行)。

パイプ型フイルター、シガレツトパイプ等の喫煙具は、使用に際して口と接触し、喫煙具内を通過した煙草の煙が口内を経て体内に吸入されるにもかかわらず、これらのものは、従来、一般に紙製等の箱内に裸のまま収納されていた。しかし、箱が密封されていないので、気温の変化や震動による箱自体の呼吸作用によつて箱内外の空気が出入りし易く、環境や条件によつては病原菌、雑菌、湿気、臭気、塵埃等が箱内に侵入して、喫煙具を汚染するおそれがあつた。この欠点を改善する方法として、箱全体をプラスチツクフイルムで密封したものがあつたが、これはプラスチツクフイルムを破つて箱内のシガレツトパイプを一個ずつ取り出して使用するため、箱内に残つているシガレツトパイプはあたかも開封された薬剤を箱内に入れて放置しておくようなもので、問題解決にはならなかつた。また、連続した波形状に形成したプラスチツク外殻体の空間部分に内蔵フイルターに水を含ませ、シガレツト挿入口側と吸口側とに特別の密閉用蓋が嵌着されたシガレツトパイプを収納し、その外殻体の裏面周囲を厚紙で接着させたものがあつたが、これはシガレツトパイプを個別に密封したものではなく、表面の厚紙を破つてシガレツトパイプを取り出すとき全部のシガレツトパイプが外に飛び出すおそれがあり、その上、取り出したシガレツトパイプを使用する際は両側密閉用蓋を個別に取り外す作業を必要として不便であつた(同公報第一頁第一欄第二九行ないし第二欄第二五行)。本件発明は、右知見に基づき、前記のような欠点を一掃した喫煙具封入面体を提供することを目的とし、本件発明の要旨のとおりの構成を採用したものである(同公報第一頁第二欄第二九行及び第三〇行、第一頁第一欄第一七行ないし第二二行)。

本件発明は、右構成を採用したことにより、上包材側から下包材側へ若干押すのみで、喫煙具を簡単に取り出せるばかりでなく、各喫煙具の汚染防止と汚損防止とが図られて衛生面で完全であり、しかも不使用の上下包材内の残存喫煙具も外気と完全に隔離されていて極めて衛生的であり、香料等も減損されない等の効果を奏するものである(同第二頁第四欄第一三行ないし第一九行)。

(二) 他方、第一引用例及び第二引用例には、前記「審決の理由の要点」第3項記載の技術的事項が記載されていること、本件発明の包装形態はPTPと呼ばれる周知のものであつて、第一引用例記載の考案のような、包装本体シートの凹部に収容物を収納した後、蓋側シートを金属箔層を外側にして重ね熱接着し収容物を密封した防湿性包装体と、その形状及び密封効果について格別の差異がないことは当事者間に争いがない。

2 原告は、「本件発明は、喫煙具が呼吸作用が有することに着目したものであり、このような呼吸作用を有する喫煙具を包装する本件発明の目的、効果は第一引用例及び第二引用例記載の考案からは全く予測されないし、また、本件発明の構成にも充分な困難性がある。」と主張する。

本件発明は、喫煙具は使用に際して口と接触し、喫煙具内を通過した煙草の煙は口内を経て体内に吸入されるから衛生上の安全を図らなければならないものであり、従来のように、喫煙具を密封していない紙製等の箱内に裸のまま収納しておくと、外気中の病原菌、雑菌、湿気、臭気、塵埃等が箱内に侵入し、喫煙具を汚染するおそれがあることから、喫煙具を個別に密封し、外気との接触を完全に遮断して病原菌等の侵入を防止し、かつ使用時には個別の取り出しができるようにすることを技術的課題とし、プラスチツク製の上包材とアルミニユーム箔等の金属箔製の下包材との間に適宜挟んで、上包材と下包材との各喫煙具の周囲を熱接着して各喫煙具を個別に密封するという構成を採用したもので、これにより、喫煙具の汚染、汚損防止が図れるとともに、喫煙具を簡単に取り出せるという効果を奏するものであることは前記1(一)で認定したとおりである。

他方、第一引用例記載の考案における収容物である錠剤、カプセル等も口に入れるものであるから、外気中の病原菌、雑菌、湿気等の附着による汚染、汚損等を防ぎ、衛生上の安全を図らなければならないことは明らかである。そして、第一引用例記載の考案は、プラスチツク製の包装本体シートと金属箔製の蓋側シートとの間に錠剤、カプセル等を適宜間隔に配置して熱接着することにより右収容物を個別に密封した防湿性包装体であることは前記1(二)に記載のとおりであり、錠剤、カプセル等の収容物が密封包装されることによつて外気との接触を遮断され、病原菌等による汚染、汚損等が防止され、品質の保持が図られるという効果は、右考案の構成から当業者に容易に理解し得るところであり、その構成から自ずと明らかな効果である。

してみると、本件発明と第一引用例記載の考案とは、いずれも口に入れるものの汚染を防止するために、PTP包装をし、外気との接触を遮断して品質の保持をしているものであることに変わりはない。

そして、本件発明の包装形態はPTPと呼ばれる周知のものであり、また、カプセル、キヤンデー、チヨコレート等口に入れるものであつてその外形が細長形状である内容物をその形状に合つた収容室に入れてPTP包装することは第二引用例に開示されていることからすれば、本件発明は、従来公知のPTPに喫煙具を封入したものにすぎず、喫煙具の包装上の技術的課題を解決するための特別な構成を有するものとは認められない。

原告は、呼吸作用を有する喫煙具を包装する本件発明の目的、効果は第一引用例及び第二引用例記載の考案からは予測し得ないものであるというが、本件発明は喫煙具に外気中の病原菌等が附着することを防止することを技術的課題としたものであることは前記認定のとおりであり、前掲甲第二号証(本件公告公報)によるも、本件発明が、喫煙具の呼吸作用に着目し、その呼吸作用による喫煙具内の煙道、又は中空孔内に生ずる衛生的危険を防止することを技術的課題としているものとは認められない。のみならず、たとえ本件発明の目的、効果が原告主張のとおりであつたとしても、右の目的、効果は第一引用例及び第二引用例に開示されたPTPに喫煙具を包装しても同様に達せられるのであることは右各引用例記載の考案の構成からみて当業者が容易に予測し得ることである。

したがつて、公知のPTP包装において細長形状の収容物として喫煙具を選択することは当業者に格別困難なこととは認められず、結局、本件発明は、第一引用例及び第二引用例記載の考案に基づいて当業者が容易に発明することができたものと認められる。

3 以上のとおりであるから、相違点(イ)についての審決の判断は正当であり、審決に原告主張の違法はない。

三 よつて、審決の違法を理由としてその取消しを求める原告の本訴請求は失当としてこれを棄却することとする。

〔編注1〕本件発明の要旨は左のとおりである。

プラスチツク製の上包材とアルミニユーム箔等の金属箔製の下包材との間にパイプ型フイルターやシガレツトパイプ等の喫煙具を適宜間隔に挟んで、上包材と下包材との各喫煙具の周囲を熱接着して各喫煙具を個別に密封したことを特徴とする喫煙具封入面体。

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